研究課題/領域番号 |
21659383
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 史隆 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40224985)
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研究分担者 |
那波 明宏 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90242859)
柴田 清住 名古屋大学, 医学部附属病院, 准教授 (90335026)
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キーワード | がん幹細胞 / ニッチ / 腹膜中皮細胞 / CD133 / CXCR4 |
研究概要 |
近年、がん幹細胞に対しても生態的適所であるニッチが存在しがんの維持および転移に重要な役割をもつことが示唆されている。本年度の研究において我々は、卵巣がんの主な転移形式が腹膜播種であることに着目し、腹膜中皮細胞が卵巣がん幹細胞ニッチになり得るとの仮説を立てた。 そして、卵巣がん幹細胞と腹膜中皮細胞との相互作用についての検討を行った。我々は、当教室にて樹立した、卵黄嚢腫瘍細胞株NOY1においてCD133を幹細胞マーカーとして同定し、さらに、CD133陽性細胞を腹膜中皮細胞と共培養するとCD133発現細胞が長期間にわたって維持され、2週間にわたる長期培養後もCD133強発現が免疫染色によって確認された。CD133陽性細胞は陰性細胞に比べIn vitroでのコロニー形成能が亢進しており、中皮細胞との非共培養下では2.4倍であったのに対し、共培養下では4.3倍と中皮細胞との共培養によってその差が顕著となることを見つけた。中皮細胞を下層にまいた浸潤能の比較においてもCD133陽性細胞は陰性細胞に比して中皮細胞方向への浸潤能の亢進を認めた。また、CXCR4アンタゴニストの併用によってCD133陽性細胞におけるコロニー形成能、浸潤能の亢進はほぼ完全にキャンセルされた。 卵巣がん幹細胞のニッチの一つとして腹膜中皮細胞が作用し、SDF-1-CXCR4シグナルを介してCD133陽性細胞の自己複製能、腫瘍形成能、浸潤能に関与することを示した。さらなるニッチ分子の同定やがん幹細胞、ニッチ間シグナル伝達の解明は卵巣がん腹膜播種に対する新規治療法の開発につながる可能性がある。
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