研究概要 |
我々は予後の判明している漿液性腺癌組織を用いて、マイクロアレイ解析を実施して予後を推定できる遺伝子の網羅的解析を実施し、約10種類の遺伝子の抽出に成功した。予後不良例で過剰発現した遺伝子は胎児の初期発生時に過剰発現する遺伝子群や間葉系細胞に特徴的に発現する因子であることを発見した。この現象は上皮・間葉移行epithelial-mesenchymal transition(EMT)といわれているものであり、悪性化機序として報告されているが卵巣癌では報告がなかった。 そこでEMT関連遺伝子による形態・生物活性への影響を調べるため、TGF-beta, HGF, EGFおよびその受容体の発現を免疫組織学的に検討した。次にシグナル伝達の結果としてPI3キナーゼ,Akt, Snail, Slug, SIP1, Wnt, Twist、蛋白分解酵素としてuPA, MMPの過剰発現あるいはリン酸化が起こることを確認し、癌細胞の増殖、細胞分裂、アポトーシス、浸潤能が促進されることを証明した。 現在、卵巣がん組織型別に検討し、明細胞腺癌の発癌機序の解明を計画しているが、その予備的データが得られた。明細胞腺癌の予後不良因子として薬剤感受性低下が問題になっている。そこでEMTで変動する遺伝子の中から下人遺伝子の一つとしてhepatocyte nuclear factor(HNF)-1betaを探し当てた。現在、HNF-1betaをノックダウンすることにより薬剤感受性が亢進することを確認した。その機序を調べているところである。
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