研究課題
【予後推定遺伝子の抽出】我々は予後の判明している卵巣漿液性腺癌組織を用いて、マイクロアレイ解析を実施して悪性度を推定する遺伝子の網羅的解析を実施した結果、12遺伝子の過剰発現あるいはリン酸化が起こることを確認した。これらは癌細胞の増殖、細胞分裂、アポトーシス、浸潤能が促進された結果であることを確認した。さらにこれらの遺伝子を含めてパスウエイ解析およびGene Ontology解析を行った結果、卵巣がんの悪性度を規定する因子として上皮・間葉移行epithelial-mesenchymal transition(EMT)関連遺伝子が最重要因子として抽出された。一方、卵巣明細胞腺癌では悪性を反映する遺伝子プロファイルが漿液性腺癌とは異なっていた。明胞腺癌の予後不良因子として薬剤感受性低下関連遺伝子、解毒遺伝子、細胞周期遺伝子が予後規定因子が同定され、これらの遺伝子発現は酸化ストレスと密接に関連していることが判明した。酸化ストレス過剰の原因か結果かは不明であるが、転写因子hepatocyte nuclear factor (HNF)-1betaが過剰発現しており、この遺伝子下流の70%に解毒遺伝子が存在していた。【HNF-1beta遺伝子ノックダウンによる結果】HNF-1betaをノックダウンすることによりアポトーシスを誘導すること、薬剤感受性が亢進すること、細胞周期停止が解除されることを確認した。【免疫染色法・血清測定法の確立】上記のマイクロアレイおよびプロテオミクス解析により過剰発現しているEMT関連蛋白およびHNF-1betaを免疫組織染色することにより、予後不良漿液性腺癌、明細胞腺癌に特異的に過剰発現していることを確認した。現在、各種因子を血中で測定するために免疫比濁法(ナノセンサー、ネットフォース株式会社製)・ELISAで測定している。
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