■本邦における原発性腹膜癌の臨床病理学的多施設共同研究 腹膜癌患者の予後因子を含めた臨床病理学的特性を後方視的に検討した。国内の8施設において、GOGの診断基準の基づき診断された腹膜癌症例83例を対象とし、各施設の研究協力者が診療記録より各臨床病理学的因子を調査し、集計したデータを統計学的に解析した。その結果、(1)主たる腫瘍占拠部位は大網、腹膜、腸間膜、横隔膜などの上腹部臓器であること、(2)高頻度に後腹膜リンパ節転移を認めること、(3)初回手術時の手術完遂率(optimal率)は、術前化学療法(NAC)群が初回腫瘍減量術(PDS)群より高い傾向を示すこと、(4)化学療法の効果は、NACの奏効率が91%、術後一次化療の無増悪率が88.1%であり、いずれも有用であること、(5)累積生存率はPDS群が28.3%、NAC群が50.2%で、後者が予後良好の傾向であること、(6)腫瘍減量手術の成功が予後を改善する傾向にあり、その反面適切な腫瘍減量を行えなかった場合は、極めて予後不良であること、などの特性が判明した。 ■腹膜癌の術前診断法の確立-臨床的腹膜癌の診断基準の検討- 代表者らが提唱する「臨床的腹膜癌の診断基準」に基づいて、前述の83例を後方視的に検討した結果、術前に腹膜癌と診断可能であった症例は、全体の84%に上り、術前診断は十分可能であることが示唆された。 ■腹膜癌の診断における細胞学的検討-子宮内膜細胞診における有用性の検討- 子宮内膜細胞診への腹膜癌細胞の出現状況としては、全体の34%に出現することが判明し、しかもその細胞像としては、腹水中に認められる非常に異型の強い腺癌細胞と同様のものであった。腹膜癌の診断における子宮内膜細胞診の有用性が示唆された。
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