研究課題
高強度トレーニングは、活性酸素の産生を高め、酸化ストレスを亢進することが知られている。低強度加圧筋力トレーニングは、高強度トレーニングに匹敵する筋肥大効果をみとめると報告されており、起立性低血圧の治療に応用した。また加圧トレーニングならびに種々な運動様式の血中酸化ストレス指標に及ぼす影響につき健常人ならびに患者で検討した。各種目において、血中の酸化ストレス指標として活性酸素代謝産物濃度(dROMs test)と抗酸化力指標(BAP test)を測定した。加圧下での低負荷エルゴメーター運動及び筋力トレーニングは、非加圧時に比し、有意なdROMs、BAP上昇を認めた。さらに、健常人では、BAPは、乳酸、WBC、ノルアドレナリン(NOR)と有意な相関をみとめたが、dROMsとは相関は見られなかった。一方、起立性低血圧群では、dROMsは、乳酸、WBC、NORと有意な相関をみとめ、BAPも乳酸、WBCと相関を認めた。このように、加圧トレーニングでは、酸化ストレス・抗酸化力の亢進が見られた。健常人では、運動強度、血流制限に依存して抗酸化力が活性化し、酸化ストレスの上昇を抑制するが、疾患群では、運動強度、血流制限によって依存して酸化ストレスが亢進すると思われ、加圧トレーニングを応用する際には、負荷強度、血流制限の程度などを十分考慮する必要があると思われた。我々は、重篤な起立性低血圧患者においてマシンが使用できない場合は、elastic bandを用いた加圧トレーニング、加圧ウォークなどの負荷の軽い加圧トレーニングも実施している。そこで、高齢者の加圧ウォークの下肢筋力、筋肥大ならびにQOL改善効果についても検討した。加圧ウォークは、高齢者の下肢筋力を改善するとともに、静脈コンプライアンスを改善した。今後、起立性低血圧患者において、加圧トレーニングの効果とともに、安全で効果的なトレーニングメニューの作成につき、酸化ストレス、炎症の面からも研究を継続する予定である。
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