本研究では難聴遺伝子変異マウス内耳へのiPS細胞の効果的な細胞導入法を開発するため以下の実験を行い、成果が得られている。 遺伝子変異マウスの作製 我々は細胞移植治療の対象とする遺伝性難聴モデルマウスとして、ヒト遺伝性難聴において世界で最も高頻度に変異が検出されるConnexin26(Cx26)のコンディショナルノックアウトを新規に作成した。まず新規に作成したCx26遺伝子のfloxedマウスにPOプロモーターの制御下で内耳を含む神経系全域でCre遺伝子を発現するトランスジェニックマウスであるPO-Creマウスを交配し、floxed Cx26アレルがホモ接合体であり、Cre遺伝子が陽性となる個体(Cx26コンディショナルKO)を選抜し、同腹仔とともに移植実験に供した。 経半規管細胞移植法の検討 移植法の検討としてまずは既に移植効果の確認されている骨髄間葉系幹細胞(MSC)を使用した。後半規管および外側半規管に小孔をあけ、後半規管より2×10^5cellsを還流し、小孔の修復のためにMSCの無接着培養により作成した細胞塊(cell sphere)を小孔部に挿入することにより術後のリンパ液の漏出を抑えた。同方法により挿入された移植細胞塊は術後2週間においても半規管組織内において維持、さらには進展していることが確認されている。 移植細胞の検出 経半規管移植後の組織を抗GFP抗体での免疫蛍光染色により移植細胞の組織進入を解析したところ、前庭線維細胞組織内、蝸牛ラセン板縁組織内に移植細胞の生着を確認した。移植後の聴力を術後8週間までモニタリングしたが、手術による聴力低下は正常動物でも難聴モデルにおいても見られなかった。
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