研究概要 |
本年度はγPGAナノ粒子の眼内動態、局在、経時的変化を調べた。正常SDラットにナノ粒子(0.8mg/ml,4mg/ml,20mg/ml)を5μl眼内投与し、局在、経時的変化を眼球凍結切片および網膜伸展標本で調べた。その結果、正常網膜にはナノ粒子は集積しないことが判明した。最大濃度(20mg/ml)の眼内投与では若干の炎症細胞の遊走が認められたが、0.8,4mg/mlでは炎症惹起性も認められなかった。 続いて網膜障害モデルでナノ粒子の眼内動態を検討した。動物病態モデル(網膜剥離モデル、網膜虚血モデル、ブドウ膜炎モデル、)にナノ粒子を投与し、2日後、7日後、14日後、28日後に眼球摘出し、凍結切片でナノ粒子の細胞レベルの局在と、粒子の滞留性を調べた。網膜剥離モデルでは、網膜下腔に遊走したマクロファージにナノ粒子の集積を認めた。網膜虚血モデルでは、活性化したマイクログリア細胞にナノ粒子の集積を認めた。ぶどう膜炎モデルでは、硝子体腔内に遊走したマクロファージに粒子の集積を認めた。マクロファージ、マイクログリア細胞へのナノ粒子の取り込みを検討するために、初代培養法にてマクロファージとマイクログリア細胞を回収し、ナノ粒子を取り込ませた。その細胞はTNFαで刺激され炎症性サイトカインを分泌するが、消炎作用を持つデキサメサゾンをナノ粒子に含有し投与すると、その炎症反応が抑制された。本研究で使用したナノ粒子が病的状態のマクロファージ、マイクログリアへ取り込まれる特性を利用して、薬剤をターゲット細胞特異的に運搬し、副作用を抑えた新しい眼内投与法の開発が期待できる。
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