研究概要 |
世界初の偏光感受型・高侵達・前眼部三次元光干渉断層計(optical coherence tomography, OCT)を開発する目的で,光源1.3μm,200x200のAライン測定を2秒で行う波長走査型光干渉断層計を組み立てた.角膜上の出力は5mW,感度は107dBである.偏光感受型フーリエドメイン光干渉断層計も同様の構成だが,光源側にelectro-optic polarization modulatorを,検出側にpolarization-sensitive detectorを配置し,組織の偏光特性を測定する構成とした.以上のシステムを,正常ヒト篤志者にて最適化し,偏光感受型・前眼部三次元光干渉断層計撮影を行い,従来の光干渉断層計では検出困難であった強膜岬,線維柱帯,強膜角膜移行部などの検出率を検討している.また,組織内構成要素の分離検出精度を検討中である.また,波長走査型光干渉断層計の所見と比較することにより,各組織における光干渉断層所見の特徴を分類することを試みている.人体の組織における結合繊維の構造は,コラーゲン繊維の幾何学的な配列によって規定されている.一般に散乱は偏光依存性を持っている.従来,生体を無侵襲に測定するための光散乱計測では,測定を簡便化するため偏光依存性を無視する場合が多かった.しかし近年,生体細胞による散乱の偏光依存性にはその生体に関するより多くの情報が含まれていることが報告されており,偏光依存性の医学的応用を目指した研究が行われるようになっている.我々は本研究において,網膜と同様に前眼部における複屈折(birefringence)変化を捉えることにより,組織の形態変化だけでなく,組織内の繊維走行の変化や創傷治癒過程の解析,構造内要素の分離検出などを行うことを試みている.
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