研究課題
本邦における提供角膜数は欧米と比較して、約20分の1と圧倒的に不足しており、角膜不足の解決策として全世界的に人工角膜の開発に期待がかかっている。角膜の部分的再生として、培養ヒト角膜上皮シートが我々のグループを含めて国内外のいくつかの施設で臨床的に移植されている。また角膜以外の組織である結膜や口腔粘膜上皮を用いた自己培養組織を用いた移植も行っているが、移植後には細胞が徐々に疲弊するため、あらたな細胞を供給する必要がある。幹細胞は、移植後の細胞供給源となりうるため、角膜以外の自己幹細胞を用いた角膜再生に期待がかかっているが、現時点では検討されていない。本研究では、角膜に最も近い組織である結膜由来の自己幹細胞を選択的に採取し、角膜上皮の再生に利用することを目的としている。本邦では、ドナー由来の角膜ならびに眼組織を研究に用いることは倫理的に困難であることから、まず動物眼由来の組織を用いて研究を行った。眼球が比較的大きい、家兎の角膜上皮ならびに結膜上皮を採取し、培養することに成功した。角膜上皮と結膜上皮ではムチンの産生など、その働きがことなるが、両者とも通常の上皮細胞用培養液で培養ならびに凍結が可能であることを証明した。また、角膜上皮および結膜上皮よりスフェアー法と呼ばれる浮遊培養法により、未分可な組織幹細胞を採取することに成功した。これらの細胞塊は神経幹細胞マーカーネスティンに陽性で、細胞増殖マーカーのBrDUの取り込みが盛んであり、通常の細胞よりも増殖能および未分化能を有していることを証明した。
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