研究概要 |
本年度は昨年までに得られた結果を、臨床応用すべく研究を発展させた。昨年までは、ラット眼内に超音波を照射することで、眼内のフィブリンが消失することを報告した(Yamashita T, Ohtsuka H, Arimura N, Sonoda S, Kato C, Ushimaru K, Hara N, Tachibaha K, Sakamoto T. Sonothrombolsis for intraocular fibrin formation in an animal model. Ultrasound Med Biol. 2009)。この現象を臨床応用するには、より厳密な安全性の評価が必要である。そこで、学内倫理委員会に諮問して、血流測定用の超音波装置を用いて比較的強い超音波を長時間眼球に照射して、眼内にどのような影響が出るかを研究した。特に視機能回復が絶望的な網膜中心動脈閉塞症患者10名10眼に参加してもらい、超音波照射を行った。その結果、血栓融解やそれに伴う血流の大幅な改善というような明らかな治療作用はないものの、網膜出血、網膜剥離、水晶体障害による白内障、ぶどう膜炎の惹起、緑内障の誘発、角膜内皮障害による角膜浮腫などの有害な所見を認めなかった。そこで、同じ条件下で眼内にフィブリンが出現した患者について臨床応用が可能と考えられる。この点について、学内倫理委員会に諮り、許可が得られ次第、臨床応用を試みる予定である。さらに、安全性と治療効果を向上させるために、新たな超音波プローブの作成を試みる予定である。
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