本研究グループは、NF-κB regulatorの一つであるIκBζの欠損マウスが、SJS類似の眼表面炎症ならびに皮膚炎を生じることを明らかにしている。IκBζは、IκBαと同じIκBファミリーに属する。しかし、他のIκBファミリーの多くが細胞質に存在しNF-κBの活性化を抑制しているのとは対照的に、IκBζは核内に存在しその働きも複雑であり解明されていない点も多い。このIκBζ欠損マウスは、結膜杯細胞の消失を伴うヒト類似の眼表面炎症を自然発症し、表皮にアポトーシス細胞を伴ったSJS類似の口囲皮膚炎を必発する。さらにSJS患者の急性期に認められる爪囲炎も発症した。このようにIκBζを介した粘膜固有の免疫機構の破綻によりSJS同様の病態が生じる。 本年度は、このIκBζ欠損マウスの皮膚粘膜炎症が、骨髄由来細胞のより生じるのか、あるいは、それ以外の上皮細胞、線維芽細胞などにより生じるのかを、マウス骨髄細胞移植実験により、解析した。その結果、IκBζ欠損マウスの骨髄細胞を、放射線照射により骨髄細胞を消失させた野生型マウスに移入しても皮膚粘膜炎症は生じなかった(骨髄移植後13週まで観察)。この結果は、IκBζ欠損マウスの皮膚粘膜炎症が、骨髄系の免疫細胞以外の上皮細胞あるいは線維芽細胞などにより生じていることを示唆している。
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