研究課題
本年度は、重症涙液減少型ドライアイに対する涙点閉鎖前・後の涙液評価、ならびに、本邦では認識されているが、海外ではほとんど認識されていないBUT(breakup time)短縮型ドライアイと他のBUT異常(BUT<=5秒)眼との違いの検討をテーマとして、前年度に確立した画像相関法(cross-correlation)を用いた涙液油層伸展初速度の計測法の応用を試みた。涙液油層伸展初速度の測定としては、まず、涙液油層観察装置(DR-1)を用いて涙液油層の観察所見をデジタル録画し、次に、画像相関法を用いて涙液油層の上方への伸展移動距離の時間変化を求め、その実測値をレオロジーのVoigt modelに当てはめ、独自にプログラムされたソフトウエア上で初速度を計測した。また、開瞼を10秒間まで維持させて涙液の自然破壊時間(Non-invasive breakup time : NIBUT)を測定することによって、涙液の安定性を非侵襲的、かつ定量的に評価しうる方法を開発した。本法の確立によって、1回の瞬目で、涙液についての2つの非侵襲的かつ定量的情報を得ることができるようになった。そして、本法を、重症涙液減少型ドライアイの上・下涙点閉鎖の前・後、あるいは、BUT短縮型ドライアイ、および、他のBUT異常眼の涙液評価に適用した。その結果、涙点閉鎖の前・後で、涙液油層伸展初速度およびNIBUTが有意に増加することが明らかになるとともに、BUT短縮型ドライアイにおいて、他のBUT異常眼に比べて、涙液油層伸展初速度が有意に速いこと、ならびに、涙液油層伸展初速度、NIBUT、眼表面の上皮障害スコアを変数とする線形判別式で、BUT短縮型ドライアイと他のBUT異常眼の判別が行える可能性が明らかになった。
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