Cyclooxygenase(COX)-2はアラキドン酸から生理活性物質のプロスタグランジン類を産生する酵素で、多くの神経芽腫でstageに無関係に発現が認められる。近年、非ステロイド系COX-2阻害剤celecoxibが、関節リウマチなどに対する消炎・鎮痛作用に加えて高用量で腫瘍増殖抑制や血管新生抑制作用を有することが明らかになった。 1.筑波大学小児外科で樹立した3系統のヌードマウス移植ヒト神経芽腫に対し、低用量CPT-11と、臨床的に妥当な低用量(5mg/kg/dose)celecoxibとの併用・連日投与を行った結果、低用量celecoxib単剤では全く抗腫瘍効果がなかったが、低用量CPT-11+低用量celecoxibの併用・連日投与は3系統全てでCPT-11単剤の効果を遙かにしのぐ相乗的な腫瘍増殖阻害作用を示した。ことに、高度に多剤耐性のヌードマウス移植神経芽腫1系統では、CPT-11+低用量celecoxibとの併用投与終了後も腫瘍は縮小し続け、腫瘍倍加時間はCPT-11単剤の場合の約4倍に延び、治療終了80日後でも再増殖を認めない例があった。 2.併用により腫瘍細胞のさらなる増殖阻害、Baxの発現亢進とBcl-2の発現抑制、およびミトコンドリアを介したアポトーシス経路の活性化が認められた。3系統のヌードマウス移植ヒト神経芽腫のうち2系統のCOX-2発現レベルは低く、併用による腫瘍増殖抑制作用の増強はCOX-2に依存しない可能性が考えられた。 3.消炎・鎮痛剤であるcelecoxibを、誰も試みていない低用量で低用量CPT-11と頻回併用投摩すると、より低い副作用で高度に抗がん剤抵抗性の小児悪性固形腫瘍症例を治癒しうる可能性が出てきた。併用による腫瘍増殖抑制作用の増強メカニズムをさらに解明し、小児悪性固形腫瘍の中でも頻度の高い神経芽腫と横紋筋肉腫の腫瘍幹細胞を有効に死滅させて治癒を達成する最適な新規治療法を確立できるよう研究を進める。
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