本研究は、正常線維芽細胞の無血清条件下における培養方法の確立を目的としている。生体内において、線維芽細胞は増殖をほぼ止めた状態でコラーゲンを産生していることを考慮すると、培養条件においても増殖せず生存し続け、かつ機能している(コラーゲンを産生している)ことが重要と考えている。 前年度において、DMEM培地と新しい線維芽細胞用培地であるHFDM-1培地における細胞増殖率と生存率を求めたところ、前者が培養14日目でほぼ死滅するのに対して、後者では35日目まで生存が可能であった。また、ELISAによる線維芽細胞のコラーゲン産生を測定では、前者が細胞のコラーゲン産生能がないのに対して、後者では、培養線維芽細胞がコラーゲンを産生していることが確認された。そこで、今年度においては、コラーゲンを産生しながら長期培養を可能とする培地条件を探求するべく、HFDM-1培地に必須脂肪酸とパルミチン酸添加の増殖率と生存期間延長効果をみて、加えて細胞膜脂肪酸解析を同時に行うこととした。その結果、最も生存率が高く、細胞膜の脂肪酸組成が正常の線維芽細胞に近い培地条件は、パルミチン酸、リノール酸、EPAを添加した群であることが判明した。現時点においては長期培養方法の確立には至らないが、短期無血清培養方法として今後の研究に役立てたい。
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