研究課題
唾液腺悪性腫瘍は、病理組織の悪性度によって予後が大きく異なる。中でも唾液腺導管癌は術後の再発率が高く、予後はきわめて不良である。その理由として神経や血管に沿って浸潤する進展様式などがあげられる。本研究では、ナノバブルと高周波超音波を用いた四次元画像システムを完成させ、「超悪性唾液腺腫瘍」の腫瘍血管新生を観察するとともに、腫瘍血管の新生を抑制する治療・標的ナノバブルを用いて、新たな遺伝子治療法の開発を目指す。本年度においては、「超悪性唾液腺腫瘍」の疾患モデルの開発を試みた。本研究課題における疾患モデルの条件としては、1)遺伝子治療を想定した研究に対応できること、2)in vivo生体発光イメージングシステムによる腫瘍の増殖、転移の状況を把握できること、3)ナノバブルを用いた高周波超音波画像解析装置による画像解析が可能であること、4)腫瘍が転移性でび慢性の浸潤様式を示し、臨床的観点から高悪性度腫瘍の生物学的性状を示すこと、5)病理組織像が「超悪性唾液腺腫瘍」に類似していること、などを想定した。以上の観点から、実験モデル動物としてマウスを用い、腫瘍細胞は、我々が開発してきた、マウスに生着し、ルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現し、in vivo生体発光イメージングシステムによる腫瘍の増殖、転移の状況を把握できる実験腫瘍細胞株の中から選択することにした。唾液腺導管癌の組織像は、乳腺の乳管癌に類似していることが知られていることから、我々が開発したルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現する乳癌細胞株であるEMT6-luc細胞を用いて、転移能の検証実験を行っった。その結果、EMT6-luc細胞は、び慢性に浸潤し、細胞の接種部位によっては、効率に肝転移を起こすことがin vivo生体発光イメージングシステムにより確認でき、この実験腫瘍モデルが本研究を遂行する上で極めて有用と思われた。
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Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod 108
ページ: 70-74