研究概要 |
。生体の免疫反応においてCD25^+CD4^+調節性T細胞(Treg)細胞は抑制機能に特化したT細胞群で異常な免疫反応に由来する自己免疫疾患の発症阻止などで重要な働きをしている。生後3日目にマウスの胸腺を摘出するとヒトの臓器特異的自己免疫病と免疫病理学的に相同な諸病変(唾液腺炎、涙腺炎、胃炎など)が自然発症する胸腺摘出自己免疫モデルの解析の結果から、正常な免疫系は異常あるいは過剰な免疫応答を抑制するためにTreg細胞による免疫応答における負の制御機構を備えていることが明らかとなった。しかし、自己抗原特異的Treg細胞に実態についてはいまだ明らかにされていない。Treg細胞の起源については、一部は胸腺で機能的に成熟した形で産生されるが、末梢でもナイーブT細胞からある適切な条件下で自己抗原による刺激を加えればナイーブT細胞から分化する自己抗原特異的Treg細胞の誘導が可能であるものと考えられる。本萌芽研究においては、臓器特異的自己抗原が解明されているNFS/sld(α-フォドリン:シェーグレン症候群)及びBALB/c(プロトンポンプ:自己免疫性胃炎)の2系統による胸腺摘出自己免疫モデルを用いて個体内で自己抗原特異的なTreg細胞の分化誘導法を確立し、さらに、その際に抗原特異的Treg細胞の分化誘導液性因子を同定することを目的としてin vivo, in vitroの実験を実施した。さらに、分化誘導液性因子によって得られた自己抗原特異的Treg細胞をin vitroでクローン化し、in vivoへ移入することにより病態抑制効果が検証された。自己抗原特異的Treg細胞によって臓器特異的な自己反応性T細胞の抑制が可能であることが示唆され、抗原特異的Treg細胞による細胞免疫療法の有効性が確認された。
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