研究概要 |
近年、インプラント材料にナノテクノロジーを応用し、従来にない新しい機能性を見出そうとする研究が盛んにすすめられている。材料のナノ化およびその均質な形状の付与は、新規機能を発揮する可能性を秘めている。本研究の目的は、チタン表面に安価・容易な方法で「酸化チタンナノチューブ(TNT)」を合成し、この構造制御によって、新規インプラント材料の開発に結びつけることである。本研究計画の初年度には、低温化学合成法の条件検討から、高度な縦横比を示すチューブ構造のTNT層で覆われたチタン表面の作製に成功している。本年度は、TNTがCa^<2+>あるいはPO_4^<3->に対して高い吸着能を有することを明らかにした。また、0.1-1ppmのTNT粉末は、ラット骨髄由来間葉系幹細胞(rMSC)に対して著明な細胞毒性を示さず、骨芽細胞分化の指標であるアルカリフォスファターゼ活性を促進するという知見を得ている。したがって、TNT粉末は生体適合性を有した材料であり、さらに骨芽細胞分化を促進する作用を有する可能性が示唆される。さらに,TNTプレート表面にrMSCを播種して骨芽細胞への分化誘導を行った結果,チタンプレートを用いた場合と比較して、TNTプレート表面にはより多くのCaよびPが検出され、rMSCが細胞外基質の石灰化を示す骨芽細胞に効率的に分化することが明らかとなった。このように、TNTプレートはアパタイト成分吸着能を有し、培養細胞に対して細胞接着、増殖、分化誘導能を示す。したがって、TNT表面を有するチタン材料は、骨伝導能を有する医療材料として有用である可能性が示唆された。今後、TNTの構造面などを、より生体内での骨伝導に適した条件に改良にすることで、従来のチタンインプラント材料の骨伝導能を上回る性質を付与できることが期待される。
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