本研究では脳機能解析法を用いて顎機能と認知・記憶および全身機能との関連を明らかにすることを目的としているが、本年度は脳機能解析方法の中でも非侵襲的かつ空間分解能に優れたfMRIを用いるため、施設内の当該装置および機器・ソフト等の準備を行い、実際の撮影を行うことができる状況を確立した。その中で顎運動を行った際にはどうしてもモーションアーティファクトを避けることが難しいため、頭部の固定方法について、現在予備実験で検討中である。またfMRIの弱点である時間分解能については、脳波解析法を応用することで補足することとした。本年度は脳波解析法の手技を習得し、またその機器およびソフト等必要な設備を整えた。さらにこの脳波解析装置を用いて予備実験を数回にわたって行った。その結果、開閉眼や単純な計算、あるいは会話等では脳波記録を妨害されないが、顎運動を行うと筋電図が脳波の波形を変化させてしまうということが明らかとなった。このため現在脳波解析においても認知・記憶機能に与える顎運動の影響を調査する方法として、一定時間の顎運動前後の反応時間等を比較してみるなどの検討を行っている。また従来からストレスと顎機能との関連を示唆する報告がみられるため、本研究はストレスと脳機能および顎機能との関連について調査することを包括している。ストレスや心理状況を調査する方法としてSTAI等のアンケート調査を行う一方で、光の波長によって生理的影響と視覚的影響を及ぼすことが報告されていることから、本研究においてもこれらの光の影響ついても検討することとした。具体的には現在注目されているLED照明を用いて、赤色、青色、緑色、白色の4色の照明を用いた場合のそれぞれにおいて、顎運動前後の反応時間、脳波のパワースペクトル解析により、アルファ波およびベータ波の比率等を調査している。現在被験者数を増やし、データの蓄積を行っている。
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