口腔インプラント(インプラント)治療は、現在においては急速に適応が高まってきており、高齢化にともなう顎口腔の歯列の形態的・機能的変化による咀嚼障害を回復する方法として、長寿社会へ貢献しつつある。近年、インプラント治療は中高齢者のQOLの向上とともにアンチエイジングにも貢献している。このようにインプラント適用患者が急速に高まっている現在においては、インプラント周囲に悪性腫瘍が発生して放射線療法が適用される場合が予測される。しかし、インプラント治療後の口腔領域に悪性腫瘍が生じ、腫瘍切除術に際して放射線療法が適用された場合におけるインプラント/骨界面に関する報告はなされていない。本研究では、インプラント埋入後に放射線療法が行われた場合におけるインプラント周囲での骨組織反応を解明することを目的として、平成21年度は、インプラント周囲骨組織の創傷治癒過程を想定して、培養骨芽細胞へ放射線照射を行い、骨芽細胞の細胞外骨基質生成に関する形態観察ならびに細胞付着率について分析した。電子プローブX線微小部分析装置(EPMA)を用いた細胞外基質生成の分析では、放射線量に依存して基質生成過程に変化を認めた。細胞初期付着率は、高照射線量群は非照射線量群に比較して低い値を示したが、総細胞数の20~30%は生存していた。平成21年度の研究成果より、培養骨芽細胞の細胞外基質生成は放射線量に依存しているが、完全に細胞死することなく生存しており、細胞増殖速度の低下と細胞分化パターンに変化を認めるものの、経日的に細胞外基質を生成していくことがわかった。
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