研究概要 |
本研究は歯周病により失われた歯周組織の再生を目指して企図したものである。そのために細胞レベルのハニカム構造を有する生体親和性ポリマーを基材として,tissue engineeringによる培養細胞グラフトを構築する.これをバリアメンブレンと同様の方法で歯周組織中に設置することで,従来のGTR法より質・最においてより優れた歯根膜および歯槽骨再生を達成する. 本研究では,ティッシュエンジニアリングによる歯根膜由来細胞による細胞グラフトの生成に欠かせない担体(スキャフォールド)としてハニカムフィルムを用いることを提唱した.ハニカムフィルムは,疎水性高分子溶液を固体基板上に塗布し,加湿雰囲気下で製膜することにより,直径1~30μmにおける任意の直径で均一化した球状微小孔が密集整列した多孔質膜である.その微小孔内に細胞を落とし込み,細胞キャリアとすることにより,簡便な行程で培養細胞シートを調製できる,ハニカムフィルムでは、すべての微小孔が横穴で繋がる空間特性により,播種された細胞は、増殖の過程で上下左右いずれにも伸展するスペースが確保され,組織化の際には本来の生体に近い3次元的連携構造に発展することが見込まれる. ポリカブロラクトン(PCL)製ハニカムフィルム上に、ヒト抜去歯より得られた歯根膜由来線維芽細胞を播種し培養したところ,付着した細胞は材料表面のトポグラフィーに応じて特有の増殖・組織化の様相を示した.すなわち,コントロール(ガラス、PCL平膜)では細胞は進展・増殖しながらも,細胞の形状はほぼ一様の紡錘形であり,増殖後における細胞同士の密集形態もまた一様であった.一方,ハニカムフィルム上における細胞形態はまちまちであり,折り重なるよう縦横に結合していた.このうち孔径5μmでは所々で小細胞塊(スフェロイド)が認められ,孔径10および15μmでは細胞群がネスト状に組織化した。
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