本年度の研究実施は以下の通りでおこなった。 コンディショナルの制作に時間がかかるため、マウスの制作をスタートし、それと並行してA170 nullノックアウトを用いたin vivoとin vitroの解析をおこなった。 1)中枢特異的ノックアウトマウスの制作 破骨細胞の異常が中枢性の制御によるものか、破骨細胞自身のシグナルの異常であるかを調べるため中枢特異的に発現をえたマウスを制作した。以前制作したA170(f/f)マウスとNestin-creTgを掛け合わせ、中枢神経系特異認にA170の発現を欠失させたコンディショナルノックアウトマウスを制作したが、途中、交配のミスからワイルドタイプと混じったため、バックグランドをそろえるためバッククロスを行い5世代まで繰り返した。 2)レプチン脳室投与によるレプチン抵抗性の解析 A170 nullノックアウトマウスが中枢性にレプチンのシグナル異常のためレプチン抵抗性が起きているかを確認するために、マウス頭蓋にカニュレーションチューブを固定し、マウス第3脳室にレプチンおよび、MSHアゴニコストを注入し食事量の変化をみた。レプチンおよびアゴニストのMT-IIを投与し、4、12、24時間後に摂食量を測定し、視床下部におけるレプチン作用の異常の有無を確認したところ、食欲の抑制がかかりにくいことがわかった。 3)中枢神経系でのレプチンシグナルの解析 レプチンの作用は、Ob-Rb受容体とそれに続く転写因子signal transducer and activator of transcription 3(STAT3)の活性化を介しているとされているため、Stat3シグナルのリン酸化に異常がないか、リン酸化抗体によるウェスタンで調べたところ、A170ノックアウトマウスでは、STAT3の活性化がベースラインの状態で恒常的に起こっていた。
|