研究概要 |
本研究の目的は細胞動態観察用生体内リアルタイムモニタシステムを開発し,多重蛍光標識により間葉系幹細胞およびその分化細胞が生体内で組織構築する様子を可視化することである.特に血管系と細胞との関わりを焦点にし,組織再生において血管網のおよぶ影響の範囲を探る.生体外で調製した細胞が生体内に導入された後の組織を構築する様子を明らかにすることができれば,再生医療あるいは細胞治療の効率化と予知性向上が図ることができる.研究の前半では細胞動態観察用生体内リアルタイムモニタシステムを確立する.後半では骨髄問葉系幹細胞mesenchymal stem cell(MSC),多血小板血漿platelet-rich plasma(PRP),それらの複合体について生体内で様相を蛍光顕微鏡により観察し評価する。このうちの前者について本年度は遂行した.生体内くみこみチャンバーを試作した.チャンバーはチタン製のフレームとガラス製の観察窓で構成した.被験動物の背部皮下や頭頂骨上に設置できるように工夫した.観察画像を記録し,これを画像解析するための条件を設定した.本研究の意義は再生医療あるいは細胞治療において,導入した細胞が実際にどのように効いているのかをはっきりさせることであり,現状は「組織が形成された」あるいは「機能が改善した」結果をみているにすぎないが,本システムにより生体内での細胞の挙動を直接的に把握することが可能になれば,これらの結果が生まれるまでの過程が明確になるであろう.
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