研究概要 |
本年度はCT値の設定とその値を用いて実際にCT画像から気道体積を算出した 1. CT値の設定 CT上で上気道の形状をトレースし体積を測定する代わりに,客観的で人的誤差を少なくする目的で気道内(空気)のCT値を用いて気道の形状とその体積を決定する.そのため現在臨床に使用しているCT機種での空間内の空気のCT値をファントムを用いて決定した.方法は,体積の判明している円柱を9つ有するファントムを作製し,現在臨床で用いているCT機種でファントムを縦,横,斜めの三方向から撮影を行った.得られた画像を用いてCT値を-200~-600HUまで50UHずつ変化させた各値で画像から体積を算出した.そこで得られた体積と実際の体積とが最も近いCT値を至適CT値とした.その結果至適CT値は-400HUであった. 2. 顎変形症患者における術後の気道形態の変化 顎変形症患者の術前・術後(1年後)にCT撮影を行い,CT値-400HUで気道(PNSを通る平面~喉頭蓋)の体積を測定し比較検討した.その結果,下顎後退症例(4例)では気道体積の平均は15.6cm3,下顎骨前方移動術後では19.2cm3と気道は約130%拡大した.反対に下顎前突症(11例)では術前の気道体積は平均19.1cm,下顎骨後方移動術後では16.2cm3と約92%に減少していた.さらに前方移動群と後方移動群に分けて気道の変化を検討したところ,前方移動群では計測した範囲内の5箇所の気道断面の変化に有意な差は認められなかった.一方後方移動群では上咽頭部で他部位に比して有意に減少していた. 3. 睡眠時呼吸イベントと気道体積に関する検討 顎変形症患者(23例)術前にCT撮影とPSG検査を施行した.CT画像よりCT値-400HUで気道(PNSを通る平面~喉頭蓋)の体積を測定した.睡眠時呼吸エベントとしてAHI,いびき指数,SpO2低下指数を用いて気道体積との相関関係を検討した.その結果,気道体積とAHI,いびき指数との間に相関関係を認めた.
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