金属材料への生体分子の固定化が可能となれば、金属材料を骨、軟組織をはじめ生体の様々な組織と結合させる事により金属材料を生体と一体化し、金属材料の特性に生体機能を付加したまったく新しい生体材料を作成すること可能となる。本研究は電着によりコラーゲン固定化したチタンと生体との親和性および硬軟両組織との結合性について解析、評価することを目的としている。平成21年度は電着による固定化の条件について検討するとともに、コラーゲン電着固定化を行ったチタン表面について走査プローブ顕微鏡による観察を行った。さらにコラーゲン固定化チタンプレートをラット頭部に埋入し、コラーゲン固定化チタンの生体組織との親和性、結合性について評価することを目的として組織学的観察を行った。これら研究計画に基づいた実験の結果、交流(-1V~+1V)1Hz、電卓時間:30min、溶液温度:25℃、溶液pH:5.0の条件で電着を行った際に最も耐久性の高いコラーゲン電着固定化チタンを作成できることが明らかとなった。また、以上の条件で電着を行ったチタン表面を走査プローブ顕微鏡で観察した結果、コラーゲンが最も安定かつ均一にチタン表面に固定化されていることが示された。さらにこれらの条件で作成したコラーゲン固定化チタンプレートをラット頭部に埋入した実験では、埋入後2、4および6週間で、チタンプレートを周囲組織と一体化して摘出し、研磨標本を作成して組織学的観察に供した。その結果、埋入後2週間のコラーゲン固定化チタン周囲の未分化細胞の数が、固定化を行わなかったチタン表面に比べて多い傾向が認められた。この実験は平成22年も引き続き行い、チタ表層の細胞の動態、組織構築の相違についてさらに観察を行う予定である。
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