研究概要 |
これまで歯周炎や齲蝕といった歯周疾患の予防に関する研究はワクチンなどの応用が考えられてきた。しかし,口腔領域は粘膜免疫という特殊性から意図する免疫の誘導が困難である。そこで本研究では発想を変え,病原因子の発現を分子レベルで抑制すれば,原因菌の定着・増殖を抑制できると考え,本研究ではペプチド核酸(PNA)を用いたアンチセンス法の応用を行った。まずPorphyromonas gingivalisに対するアンチセンスPNAの設計と構築を行い,取り込み実験を行ったが,殆どが分解し期待した結果が得られず,これはP.gingivalisの有する強いプロテアーゼ活性によるものと考えられた。そこで歯周炎と並ぶ歯周疾患の一つである齲蝕の原因菌Streptococcus mutansに標的細菌を変え、膜透過型ペプチド付与アンヂセンスPNAの取り込み実験を行ったところ,コンフォーカル顕微鏡によって取り込まれていることが確認できた。そこで平成23年度はデンタルバイオフィルムの基本構造となるグルカンを合成する酵素グルコシルトランスフェラーゼ(GTFB)を抑制したい標的遺伝子とし、これをコードするgtfB遺伝子のPNAによる発現抑制効果についてリアルタイムRT-PCRで検討した。しかし発現の抑制は認められるものの再現性がなく、取り込み条件によって結果が異なっている様なので、その条件の検討を現在も継続して行っている。その一方で,GTFBの抑制がバイオフィルムの形成阻害に繋がることを明確にするため,これに対するDNAワクチンを作製し,Clinical and Vaccine Immunology誌に発表した。また,S.mutansの口腔内定着による細菌叢への影響を明らかにし、International Journal of Paediatric Dentistry誌に発表した。
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