研究概要 |
PPARγ(peroxisome proloferator-activated receptor gamma)は脂肪細胞分化、脂質代謝、インスリン受容体抑制、NF-κBなどの転写因子活性抑制、サイトカイン産生抑制などの機能を持つ核内レセプターである。エクソンBに存在する遺伝子多型PPARγPro12Alaは転写活性を3/4に低下させることが知られている。この多型は肥満・糖尿病・早産・炎症性疾患・自己免疫疾患・胃がん・結腸がんとの関連性を報告されている。一方、歯周炎は細菌感染による炎症であり、妊婦が歯周炎に罹患していることは早産などの妊娠予後不良のリスクであるとする多くの報告がある。 そこで我々は、妊婦のPPARγPro12Ala遺伝子型が歯周炎と早産の一方あるいは両方に関連性を示すか否かを調べた。対象は新潟大学医歯学総合病院産婦人科に来院し出産した130名(正期産72名、早産58名)の日本人女性である。静脈血から抽出したゲノムDNAを用いてPCRRFLP(ポリメラーゼ連鎖反応制限酵素断片長多型分析法)にて遺伝子型を決定した。分娩後5日以内に歯周検査を行い、歯肉縁下プラークを採取し歯周病原細菌の検出を行った。その結果、PPARγPro12Ala遺伝子型を有する女性はPPARγPro12Pro遺伝子型の女性に比較して、歯周炎の臨床パラメーターの値(付着の喪失レベル,ポケット深さ,歯肉炎指数,プロービング時の出血部位の%)が有為に高かった。しかしながら早産と歯周炎の間に有為な関連性は見られなかった。このことからPPARγPro12Ala遺伝子多型は日本人妊婦の歯周炎の程度に関連性を有するが歯周炎と早産の関連性には関与しないことが示唆された。以上の成果は2010年のJournal of Periodontologyに掲載が決定した。
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