研究概要 |
本年度は,口腔保健,呼気および全身要因情報の採取を行った。また,糖尿病関連の評価としてはヘモグロビンAlcに加えて75g経口ブドウ糖負荷試験も追加し,耐糖能の評価精度を上げることを試みた。呼気の分析については,捕集管に充填する吸着材にTenax TAと低沸点物質の捕集に適しているカーボン系の捕集剤を組み合わせたマルチベット型の捕集システムを用いた呼気捕集システムの実用性を検証した。 国立循環器病センター予防検診部の健康診査を受診した341人(男性146名,女性195名,平均年齢65.4歳±7.5歳)を対象に,歯科検診と75g経口ブドウ糖負荷試験,血液検査を行った.糖負荷試験の結果は、正常群(空腹時血糖[FPG]<110mg/dLかつOGTT2時間後血糖値[2hPG]<140mg/dL)と耐糖能異常群(FPG≧110mg/dL,2hPG≧140mg/dL、または糖尿病治療)に分類した.耐糖能異常群は男性で61%、女性で36%であった.異常群は正常群と比較して咬合支持(P=0.001)が男女とも有意に少なかった.男性においては,異常群は正常群と比較して機能歯数(P=0.030)が有意に少なく、10歯未満の男性の89%が異常群であり、歯数と耐糖能には関連性があることが示唆された.また,咬合支持は,Eichner A群を基準にするとEichner B+C群において耐糖能異常のオッズ比は1.7倍(95%信頼区間:1.0-2.7,p=0.046)であった.この結果より,機能歯数や臼歯部の咬合支持が減少すると耐糖能力が低下し,生活習慣病に罹患する危険性が増加することが示唆され,全身の健康を維持するためには歯数と咀嚼能力の維持が重要であることが推察された. 呼気の分析に関しては,新たに開発した呼気捕集システムとGC-MSを組み合わせることで,呼気中の物質の定性分析が可能であることが明らかとなった。
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