研究概要 |
本研究の目的は口腔疾患のみならず様々な全身疾患を誘発することが知られている口腔バイオフィルムの形成に際して、唾液タンパク質がどのように関わるかを調べるものである。 口腔バイオフィルム形成に重要な役割を果たすStreptococcus mutansを用いて実験を行った。まず唾液タンパク質で被覆したポリスチレンプレートに各種液体培地を加えて培養を行い、形成されたバイオフィルム菌体のタンパク質発現をSDS-PAGEとウェスタンブロットで調べた。その結果、菌体の初期付着に関与する菌体表層タンパク質抗原(PAc)およびグルカン合成酵素(GTF)の発現は、浮遊菌体と比較して顕著な差は認められなかった。次に最少培地にグルコース、フルクトース、スクロース等を炭素源として添加して同様に実験を行ったが、いずれの炭素源の場合もバイオフィルム菌体と浮遊菌体との間にPAcおよびGTFの発現に差は認められなかった。この点については、さらに遺伝子レベルの発現解析を行う計画である。 そこで培地中に濾過滅菌した唾液を混入してS.mutansを培養し、形成されたバイオフィルム菌体を回収してSDS-PAGEによる解析を行ったところ、浮遊菌体と比較して新たに4本のバンド(32,45,110,250kDa)が出現していることが認められた。さらにバイオフィルム菌体には唾液アミラーゼが多く結合していることが認められ、バイオフィルムの形成時にアミラーゼが何らかの役割を演じていることが推測された。
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