高齢者とのコミュニケーションに関する、下記の3種類の調査(2009年~)を高齢者と関わる頻度の異なる3種類の対象群に対して実施し、それらの結果を分析・比較検討することにより、看護職者に求められる高齢者とのコミュニケーション・スキルの特徴を明確にした。 調査:(1)高齢者とのコミュニケーション経験についての質問紙調査、(2)設定した模擬場面でのロールプレイの画像と音声(軽度の認知機能低下と難聴がある高齢者への声掛け)、(3)高齢者とのコミュニケーション・スキルに関するインタビュー 対象群:A群-高齢者と関わった経験がほとんどなく対人的職業にも就いていない対照群(5名)、B群-高齢者と頻回に関わっているホームヘルパー(5名)、C群-高齢者とほぼ毎日関わっており、高齢者とのコミュニケーション・スキルが高いと認められた看護師(20名) 結果および考察:いずれの群においても、高齢者のためのコミュニケーション・スキルについて、理論や科学的根拠に基づいて学習した経験はほとんどなく、経験を通してスキルを獲得していた。会話のスピードについては、通常の会話速度とほぼ同じで、看護師では、400文字当たり平均68秒(SD=14.3)であった。但し、スピードは一定ではなく、単語と単語の間に長いポーズがあった。構文は、単純であり、助詞や助動詞を省略し、重要な単語を並べ、かつ単語の一音一音にアクセントをつけるパターンが多く見られた。高齢者が聞き取りにくいと考えられる破裂音などには、特に考慮せず、高齢者にとって馴染みのある言葉を積極的に使用し、反応から理解が悪いと判断した場合には、ゆっくり話す、声を大きくする、身振りを加えることで補っていた。高齢者とのコミュニケーション・スキルの特徴として(1)感覚器の機能低下を補う、(2)理解を助ける、(3)主体的発言を促す、(4)尊重的態度を示す、(5)事故を予防する、があげられた。
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