本研究は「看護系大学の授業に参加できる模擬患者を養成するための標準的な教育プログラムの開発」を目的としている。教育プログラムの開発に先立ち、昨年度、看護系大学学士課程における模擬患者参加型教育実施の現状を明らかにするため、質問紙調査を行った。 本調査は2段階(調査1.2)で実施した。調査1では、看護系大学学士課程176大学を対象に模擬患者参加型教育実施の有無について尋ね、83大学より回答を得た(有効回答率47.2%)。模擬患者参加型教育の実施は25大学(30.1%)であった。一方、教育未実施58大学のうち、殆ど(93.1%)が「実施したいが難しい」と回答し、その理由として「模擬患者の確保が困難」、「予算の都合がつかない」が多かった。 調査2では、模擬患者参加型教育を実施する25大学のうち、調査協力が得られた21大学の看護教員43名に質問紙を送付し、25名より回答を得た(有効回答率58.1%)。教育を実施している分野は、「基礎看護学」42.0%、「成人看護学」18.0%が多く、主な内容は「看護技術演習」36.0%、「コミュニケーション」24.0%、「看護過程」12.0%であった。学生への教育効果は「演習に関するリアリティや臨場感が増す」84.0%、「患者への接遇態度が理解できる」76.0%、「患者の身体的精神的苦痛が理解できる」68.0%であった(複数回答)。また、人材、予算等、大学の資源の問題から模擬患者参加型教育の実現の困難も明確になった。 以上、本調査では看護系大学学士課程における模擬患者参加型教育の現状を明らかにしたことにより、今後の模擬患者参加型教育の進め方や模擬患者教育プログラムの検討の一助となった。
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