研究概要 |
本研究は、生化学的アプローチ法でメタボリックシンドローム(MS)の皮膚障害の実態を把握しメカニズムを解明し科学的根拠のある看護技術の開発を行うことを目的としている。本年度はMSの病態とその皮膚変化を検証した。(アルドステロン濃度測定については、メカニズム解析の次年度に行うこととした。)MSの状態を反映する動物を選択するにあたり、SHR肥満ラットを使用せずTSOD(Tsumura, Suzuki, Obese Diabetes)マウス、そのコントロールとしてTSNO(Tsumura, Suzuki, Non-Obesity)マウスを使用した。TSODマウスにてMS状態の妥当性を体重、血清成分測定、糖負荷試験、CTによる脂肪量測定、血圧測定、疼痛試験から検証した結果、肥満、高血糖、インスリン抵抗性、脂質異常、高血圧、末梢神経障害が12週令において有意に出現した。動物実験ではこの12週令において皮膚障害を検証することとした。12週令TSODマウスの背部皮膚をHE染色で観察したところ、真皮、表皮は非薄であり皮下脂肪が著しく肥厚していた。さらに×200で顕微鏡観察するとコントロールよりTSODマウスのコラーゲン線維の蛇行性の減少、繊維の断裂や密度の低下が観察された。また背部皮膚組織において炎症性細胞浸潤は観察されなかったが、炎症で高値を示すTNFαの遺伝子発現量をRT-PCRで測定したところ、TSODマウスのTNF-αの遺伝子発現は、有意に増加していた。また増加したTNF-αが、組織のどの部位で増加しているかを免疫染色で確認したところ、TSODマウスの表皮部分であった。
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