研究課題
本研究は、基礎医学的手法にてメタボリックシンドローム(MS)の皮膚障害の実態を把握しメカニズムを解明し科学的根拠のある看護技術開発を行うことを目的としている。21~22年度は、肥満皮膚は潜在的炎症状態であり紫外線に非常に感受性が高い実態が明らかになり、その潜在的炎症のメカニズムの1つに酸化ストレスが関与していることを示唆した。肥満の酸化ストレスに関与する血清アルドステロン(Ad)増加および皮膚ミネラルコルチコイド受容体(MR)増加が認められ、また抗酸化薬や抗MR薬の塗布において酸化ストレスが減少した。少なくとも肥満皮膚においては酸化ストレスとMRが関与している可能性が示唆された。本年度は、肥満皮膚の酸化ストレスは、皮膚MRを介して亢進しているかどうかを検討するために組織学的にMRの存在を蛍光免疫染色法を用いて確認した。また肥満によりAdがMRと結合すると核内移行するため共焦点顕微鏡にてMR核内移行像の観察を行った。その結果、肥満皮膚においてMRの存在およびMR核内移行像が確認できた。これらの事実から、肥満皮膚の酸化ストレスのメカニズムの一部にAd増加から皮膚MRを介した酸化ストレスの亢進が示唆された。次に皮膚の炎症および酸化予防のために皮膚保護技術の開発に着手した。まずは皮膚に対する直接作用をみるために抗酸化塗布剤(1MTemple)および抗MR塗布剤(20%spironolactone)を作製し肥満皮膚に対する抗酸化作用を評価した。両塗布剤共に炎症性マーカCox2および酸化ストレスマーカHmox1の遺伝子発現量が有意に減少、また組織学的検討(HE,80HdG)においても明らかに真皮層の炎症、酸化ストレスの減少が観察された。肥満皮膚は皮下脂肪蓄積から皮膚を酸化させている可能性があるため、食事からでも摂取可能な抗酸化作用のあるビタミンE:αトコフェロール(VE)を再度選択し3か月間内服投与を検討した。その結果、肥満は皮下脂肪でも酸化ストレス(Hmox1)が上昇し皮膚のコラーゲンを分解するMMPs(2,14)の遺伝子発現も上昇していたが、VE3か月間内服投与で皮下脂肪のHmox1,MMPsは有意に減少し皮膚の脆弱性も改善した。
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Biological Research for Nursing