研究概要 |
我々は、これまでリスク評価や異文化交流で行われてきたゲーミングシュミレーションの手法を、医療安全に導入することを着想した。ゲームには第一種:特性ゲーム(認知特性などに関わる原理を再認識させる)と第二種:状況ゲーム(大まかなシナリオを基に演技をして、エラーの危険をミニチュア的に体験させる)がある。 第一種特性ゲームに関しては、SEG, TKG, MFG, KDG, KKG, STG, SKG, KBG, KHGの9つのゲームを開発した。看護学を専攻する1回生に対し、実験前後の意識の変化と気付きを測定した。実験後には、医療安全についてゲーム体験と解説によって学習し、医療安全のために重要なことをよく理解したことがうかがえる。実験後は多くの学生が、ゲームで説明した、丁寧で正確な作業をすることの重要性や、メモをうまく活用することの重要性を、医療安全のために重要なこととして挙げていた。 第二種状況ゲームでは、医療現場を想定し、時間的切迫、複数業務の同時進行などのエラー誘因を組み込んだ。そして看護師や患者などの役回り遂行における困難を体験するゲーム(多重課題ゲーム)の開発を行い、心理的反応を測定した。2回生を対象に、1.薬の分配に関する正確さ2.ゲーム実施前後の変化を評価する評定法3.各役割体験の学びに関する自由記述等でゲームへの反応を測り、実施方法と教育効果に関する意見を得た。4グループに分かれて作業の速さを競争させた結果、1.薬剤分配に関する評価では、薬の種類や量に誤りが見られ、正確な分配ができたのは1グループのみであった。2.教育効果をみるため設定した43項目に関し、最も評定が高かった項目は「人がしていたことを引き継ぐのは難しい」で、次いで「指摘されずに間違ったままめことがあるかもしれない」「複数で確認しながら作業しても正確とは限らない」で、25項目の評定が有意に上昇した。
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