医療施設における感染管理上の問題点をより詳細に把握することを目的とし、感染管理に関し責任ある立場にある看護師を対象にグループインタビューを実施した。531施設中30施設の看護師からグループインタビュー参加への意思表示が得られたが、日程調整の結果、実際にグループインタビューに参加できたのは9施設であった。無床診療所から1名、有床診療所から2名、病院から6名の参加があり、2つのグループに分けで実施した。グループインタビュー時間は1.5~2時間であった。 結果として、感染予防教育に関して、スタッフへ教育をする立場にある看護師自身が自分の知識や教育内容に不安を抱いていること、スタッフ教育の成果が評価できないこと、看護師だけでなく看護助手や介護職、事務職員など多職種に対する教育をどのようにすればよいかといった問題を抱えており、特に、感染管理担当者が一人の施設では感染管理担当者としての不安が大きく、感染管理の担当者をサポートする体制が必要と考えられた。施設間での耐性菌に関する情報交換については十分に行われているとの認識はなかった。十分に行えていない理由として、添書用紙に記入欄がないことや耐性菌に関する看護師の意識の問題等が挙げられ、組織間で統一した用紙があれば記入しやすくなるのでは、といった意見が聞かれていた。ケアネットワーク構築にあたり、スタッフ教育や感染予防対策の具体的な内容や方法について他施設の情報を得たいという意見や、困ったときの相談先が欲しいという意見が聞かれた。パソコン等を使った情報ネットワークシステムはすべての施設が有しており、必要時に情報源へアクセスすることは可能な環境であると考えられた。 これらの結果から、医療施設において感染管理体制を強化するには、感染管理担当者として組織を動かしていく能力を育成する教育プログラムや感染管理担当者間のネットワークを強化していくことも重要であると考えられた。
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