糖尿病患者の増加に伴い、重症な合併症の一つである糖尿病足病変の重点的な指導による発症予防効果に行政が注目し、糖尿病合併症管理料がつくようになった。しかしながら、糖尿病患者の足部は、疼痛・熱感を感じにくく、発赤・腫脹が表れにくいという特徴があるため、視診や触診によるアセスメントは非常に難しく、感染が先行し手遅れになる患者も少なくない。そのため、感染前の炎症所見に着目し、客観的な指標を用いた炎症徴候のアセスメント方法を開発することが急務であると考えた。そこで、本研究では、超予防的視点に立ち、糖尿病性足潰瘍を予防するために、その初期症状である炎症所見をいち早く発見する客観的な方法をサーモグラフィを用いて開発することを目的とした。 平成21年度は、足底の炎症部位と周囲皮膚の温度差のカットオフポイントの検証に先駆け、胼胝や鶏眼などの非潰瘍性病変のない者の足部のサーモグラフィの実態調査を行った。対象者は、非糖尿病者32名、糖尿病者129名であった。非糖尿病者の65%は2種類の皮膚温分布パターンに集約されたのに対し、糖尿病者の87.2%は様々な温度分布像を呈しており、自律神経障害等の影響を受けている可能性が考えられた。したがって、炎症部位と周囲皮膚の温度差のカットオフポイントを検討する際には、自律神経障害等の影響を考慮する必要性が示唆された。平成22年度は、カットオフポイントの検討を行い、その妥当性を検証する予定である。
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