本研究の目的は、遺伝性乳がんおよび遺伝子検査に関する的確な知識、臨床管理、意思決定支援、心理的・家族的課題ならびに倫理的配慮に関する統合的ケアアプローチによる「遺伝性乳がんの予防・早期発見、管理をめざす統合的ケアプラットフォーム」を創成し、その有用性、実用性を検証することにある。今年度は、遺伝性乳がんの予防・早期発見・管理に関する論点集積と統合的ケアモデルの構造化を行なった。遺伝性乳がんの予防・早期発見・管理に関する論点を集積するために、BRCA1/2の遺伝子検査にかかわる専門職者(看護師2名、医師13名、遺伝カウンセラー1名)によるパネルエキスパートを組織し、フォーカスグループ・インタビューを実施した。併せて、システマティックレビューによるエビデンスの集積を行い、現行の乳がん遺伝子検査に係わる臨床上の意義、特徴、課題、患者・家族の要請やニーズ、リソースおよびヘルスケアシステム上の課題などを整理し、臨床上、遺伝子学的な視点を包含した論点を焦点化した。その結果<医療者の遺伝性乳がんに関する知識・情報の不足><遺伝に関する不確かな知識・情報派及の危うさ><リスクをキャッチするためのコミュニケーション技術><リスクを見逃さない継続的アセスメント><リスク認知を促す看護アプローチ><リスクへの無知・無関心><リスクを見逃すことへの倫理的葛藤><意思決定支援の促進><遺伝子検査にかかわる個人情報の尊守><遺伝子検査の効用と倫理的配慮を加味した遺伝子情報のシステムマネジメント><関係性を考慮したカウンデリング><経済的負担><家系のフォローの難しさ>などが抽出された。今後、これらのカテゴリー間の関係性を検討し、統合的ケアモデルの構造化を図る。
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