研究概要 |
今年度は,卓上光刺激装置を用いてせん妄発症要因に深く関与している睡眠感やストレスについて検証した.対象は,整形外科領域の手術を受け,急性期を脱した成人期および老年期の患者である.北側のデイルームでランチタイムを利用し,約2500~3000lxの光を5日間連続して浴びてもらった.デバイスはパナソニック製の特注商品で,卓上に配置し,食事摂取後もテレビを見ながら受光できるようにした.患者には毎朝OSAの記載,アクチウォッチを装着して加速度を計測するとともに生活行動記録をつけてもらった.また,起床時と就寝前に採取し,ストレスマーカーの1種である唾液アミラーゼ活性を定量化した.患者は5名,うち男性2名,女性3名,平均年齢は74±8.1歳であった.OSAの結果では,ブライトケア後の患者5名を因子別にみると,OSA標準化得点が50以上を示した日数の割合は睡眠時間78%,起床時眠気67%でブライトケア前日と比べて改善がみられた.しかし,入眠と睡眠維持ではブライトケア前後ともに低い結果を示した.アクチウォッチ装着によって得られたデータにより%Sleepを解析したが,ブライトケア前後で有意な変化は認められなかった.ブライトケア前後の唾液アミラーゼ活性では,起床時より就寝前に低くなる傾向を示した.患者のインタビューからはブライトケアによる苦痛の訴えはなく,「ぐっすり感が得られた」,「朝,すっきり起きられた」,「あまり大きな変化はない」など2極化した発言がみられた. 卓上光刺激装置を用いたブライトケアにより,睡眠時間,起床時眠気の改善や就寝前のストレスを軽減でき,ひいてはせん妄を予防できる可能性がある.しかし,5名のみのデータであるため継続研究による評価が必要である.
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