小児脳腫瘍患児・家族の実態の全体像を明らかにするための横断的調査を行なった。具体的には次の包含基準を満たす、小児脳腫瘍経験者とその保護者を対象と定めて、全国にまたがる9医療機関でリクルートを行なった。(1)18歳以下で脳腫瘍と診断された(2)現在12歳以上(3)現在活動性の腫瘍病変がない(4)抗腫瘍治療終了後1年以上経過(5)現在入院中でない。 各医療機関の医師に経験者を紹介してもらい、139名の経験者に研究説明を行なった。未成年の経験者に対しては必ず保護者同席で説明を行なった。138名の経験者から承諾を得て、診療情報を得た。診療情報を記入する調査票を、担当医に記入してもらい、手渡し、FAX、またはメールで回収した。 また、質問紙調査を、上記の経験者と保護者を対象として行なった。経験者138名に質問紙を持ち帰ってもらい、平成23年3月末日で、96組の経験者と保護者から質問紙の返送を得た。 さらに、一部(首都圏在住)の経験者には、認知機能検査の説明も行なった。48名の経験者に依頼して、27名の経験者が同意した。経験者の指定した場所(経験者の通院先、自宅、もしくは研究者の所属機関)で、60分前後の時間を要する認知機能検査を研究者が行ない、27名ぶんの結果を得た。 このように得られたデータについて、回収と入力、クリーニングおよびデータ解析は、平成23年度まで実施することとなった。また、結果の公表は、平成23年度に実施する計画である。 また、平成21年度の研究結果を第26回日本小児がん学会で発表した。また、本研究で主要評価指標として用いた尺度の開発および尺度の特性に関する詳細な分析の結果を、Health and Quality of Outcomes誌、第28回日本脳腫瘍学会学術集会で発表した。さらに、平成22年度までの研究過程で得られた文献検討や先行知見、臨床家との意見交換、当事者(経験者や保護者)の意見等に基づき、総説論文(日本臨林)その他の発表を行なった。
|