海外では、高齢者介護施設に入所中高齢者の高い疼痛有症率(約60~80%)とそれによる弊害、認知症高齢者への不十分な疼痛管理が報告されているが、我が国では、施設入所高齢者の疼痛に関する研究はほとんど見られない。疼痛は、他者から見えない症状であり本人からの訴えが重要となるが、認知症高齢者の場合、疾患の進行により適切に言葉で訴えることが困難となりやすい。本研究では、介護老人保健施設に入所中の高齢者を対象とし、セルフレポートスケール又は疼痛の訴えの困難な認知症高齢者に対しは標準化された疼痛観察尺度を用いて、疼痛有症率を把握すること、疼痛に関連する要因を高齢者の特性と環境及び提供されるケアの双方から探索することを目的としている。 本年度は、研究計画の立案、文献レビュー、対象施設のリクルート、倫理審査を経て、現在施設での調査を行っている。本年度は、4つの介護老人保健施設での調査を終了し、来年度にはさらに複数の施設で調査を行う予定である。また、介護老人保健施設の看護・介護管理者による施設の疼痛有症率と疼痛アセスメント・疼痛管理への認識を明らかにするための質問紙調査を計画し、倫理審査を経て現在実施中である。この結果と現地調査の結果とを合わせ、施設における疼痛管理システムの構築に向け必要な体制や教育的支援についての検討を行う予定である。疼痛有症率に関する研究論文のレビューの結果は、論文化し雑誌に投稿、現在査読を受けているところである。
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