初年度に予定していた目的の1つとして精神科入院患者の身体合併症への対応と現状について全国約1200か所の精神科病院の管理者を対象に質問紙調査を実施した。質問項目の中には合併症患者の動向や身体科病院に入院を依頼した際の患者の受け入れ拒否の実態を把握するための内容を含み、現状に対する管理者の意識や現在のシステムが有効に機能していないと考える管理者には解決策について自由筆記の回答を求めた。分析結果として、一つには精神科医が身体科治療にかかわることで負担感が増している実態が明らかとなり、受療システムが存在する一部の自治体では病院間の連携がうまくとれているものの、多くの自治体では機能していないことが明らかとなった。結果の概要は関連会において順次、公表した。 本研究の重要性は実態把握に基づいて精神科病院と身体科病院の有機的な連携の可能性を多角的に検討し、従来の精神障害者に対する偏った身体科治療処遇を改善することで人権問題に発展することを防止し将来的には自殺者の減少や医療費の削減にもつながる研究である。 次年度は、今回の結果を踏まえながら身体科病院の管理者に対し、精神科入院患者の身体合併症対策について対応の現状と課題、共同対応の可能性などについて調査を実施する予定である。
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