1年目と2年目の調査結果とを照合した結果、精神科入院患者の受入れに拒否的な身体科病院では理由として精神科対応が困難なため精神疾患患者を受入れても看護を含む医療的対応ができないことをあげるケースが多かった。こうしたケースでは、背景として、本来、精神疾患患者の身体科対応は公的医療機関が果たすべき機能であり、精神科病院から個々に受入れ要請が来ないよう行政がきちんと関与し対応すべきであるとの意識が強いように思われた。さらに分析結果から明らかになったことは、一定の自治体ではこうした問題に悩む状況はほとんどなく、各自治体による格差が大きいと推察されたことである。具体的には、東京都(厳密には東京都内でも地域格差があるように思われるが)と他県のいくつかの市では精神疾患患者の受入れがスムーズにいかず困っているという回答ほとんどなく、それ以外のほぼ全国的な自治体においては概ね共通して問題状況の実態を訴えていた。つまり、行政が何らかの制度を位置づけ、患者の受入れをスムーズに何らかのシステムを導入・形成している自治体では問題は深刻な状況でなく、そうした取組を行っていない自治体にかぎりさまざまな問題が報告されていた。こうした分析結果を考えると、今後は官民共同システムの具体的な在り方を検討する手法として、先ずは異なる回答をした医療機関を分け、より詳細な実態調査を行い、その自治体ごとに制度や政策について詳細に実態を調査し、評価を行っていく必要がある。その結果を踏まえて身体合併症の予防対策にはどのようなシステムがより効果的なのかを検討すれば、実効的なモデルを提起し得るものと考える。
|