精神科病院では身体合併症患者が増加している実態が明らかとなった。院外他科受診している患者割合も比較的高く、受診依頼・転院先は公立総合病院、個人病院が多かった。最近1年間の依頼件数は31件以上が25.1%となっており、断られた件数は1~3件が35.5%、0件が28.6%、4~6件が15.6%となっており、自治体により格差があることが推察された。理由としては、精神症状への対応が困難、空床なし、他患者への影響があり、転院先が見つからない背景には精神科患者ゆえの受入れ拒否があると捉えられていることが分かった。現在の治療枠組みの機能についてはどちらともいえない40.3%、機能していない36.4%、機能している21.6%と若干の差はあるものの自治体間に格差があるためか結果が分かれた。精神科病院が行政に望むことでは、受入体制の整備、指導的関与があげられており、受診をスムーズにするための調整システムの構築が必要とする回答が多かった。一方、身体科病院では入院患者の1~5%が精神疾患を合併していると38%が回答しており、そうした患者の対応では民間精神科病院に転院依頼37.6%がなされ、公立精神医療機関への依頼は9.5%にとどまっていた。病床数の限界から民間精神科病院に頼らざるを得ない実態の一端がうかがわれる。しかし、精神科病院に断られたことがあるが66.9%、その理由として身体疾患への対応困難31.6%があり、必ずしもスムーズには機能していないことが推察される。精神科病院からの転院依頼を断ったことがあるが51.0%あり、理由として精神症状増悪時の対応困難26.5%、空床なし22.0%、他患者への影響13.1%があげられている。構造としては互いに必要とする専門医の未整備がある。身体科病院管理者が考える現在の治療枠組みについてはどちらともいえない47.3%、機能していない27.0%、機能している20.5%と精神科病院の管理者が考える構造と相似していた。身体科医師は精神科診療を兼務することについてはよくない41.4%と回答し、課題として精神科医の雇用・確保32.8%、精神科診療技術の向上23.4%、看護師の精神科看護技術の向上15.6%をあげながらも精神科病院も身体科に対応できる体制を整備すること35.4%、都道府県レベルで受療システムを整備する必要があること33.3%と回答している。これらのことから精神科病院においても身体科病院においても互いに必要とする患者問題を抱えながらも独自に対応しつつ、かつ行政に対する受療調整機能の確立を求める意向が強いことが明らかになった。どのようなシステムが必要かを考えるときに東京都の例は重要な先例になると思われる。
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