研究課題
効果的な介護予防には利用者の主体的な取り組みが不可欠であり、介護予防サービス・支援計画も、高齢者と家族の意欲・意向を確認しながら立てることが重要である。一方で介護保険サービス利用していない要支援高齢者は、何らかの生活上の問題を持ち、介護保険認定を申請したにもかかわらず、把握される機会は少なく、対象者の意向も明らかではない。本研究では、予防訪問の場面で把握した訪問対象者109名とその家族の意向を明らかにすることを目的とした。地域包括支援センターや保健センターから保健福祉職が対象者宅に訪問し、系統的にアセスメントを行い、高齢者とその家族の意向を聞き取り、その内容を記録した。それらの記述内容を要約し類似した内容を定質的に分析した結果、高齢者の意向は、高齢者本人が自律的に判断している「自己完結型」、介護保険サービスにまつわる情報やその他の支援を希望している「支援希望型」、自律的な判断と家族からの支援を伴っている「混合型」、外部からの介入を拒否している「シャットアウト型」の4つのタイプに分類された。家族の意向は、現状に不安や不満があり支援を希望している「支援希望型」、現状に満足している「支援・サービス希望なし型」の2つに分類された。また、高齢者と家族のサービス利用に関する意向は、ほとんどが一致していたが、中には意向に相違のみられる場合もあった。以上より、介護保険サービス未利用の要支援高齢者の意向は多様であることが示された。サービス未利用要支援高齢者の中に、実際には高齢者自身あるいは家族が支援を必要としている場合や、対象者本人は認識していないが、専門家による支援・見守りが必要な場合があることが明らかになった。今後、サービス未利用者に対しても、看護職が関わりをもつことや本人・家族の意向を把握すること、保健福祉職が予防的なアプローチを行うことの必要性が示唆された。
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