今年度は前年度から実施している介護老人保健施設入所者の視力測定と視機能に関連したQOL(VFQ25)、ADL(BI)、認知能力(MMSE)、抑うつ状態(GDS)、基礎疾患、転倒の有無、眼科受診歴などのデータ収集と現地調査を実施した。これまでの調査では片眼での裸眼視力と矯正視力、さらに本人の所持している眼鏡をかけての視力を測定し、生活視力(常時眼鏡を使用している場合は眼鏡使用時の視力、眼鏡を使用しない場合は裸眼視力でいずれも片眼の良好眼視力)を算出してきた。その結果視力改善可能度(「矯正視力」-「生活視力」)は施設の差が関与していることがわかった。 今回の調査では、片眼視力と両眼視力、裸眼視力と矯正視力、遠見視力と近見視力、本人の所持している眼鏡をかけての視力を測定(両眼視力と近見視力を追加)したため、よりリアルな日常生活上の視力を算出することができた。遠見の日常生活視力の中央値は0.4、裸眼0.3、矯正0.6、近見の日常生活視力の中央値は0.2、裸眼0.1、矯正0.5であった。これまでデータ解析をした結果からは、遠見視力と近見視力について視覚に関連したQOLとの関連では遠見視力、近見視力が低い者は「日の痛みや不快感」があると感じており「近見視力による行動」「遠見視力による行動」が低いことと関連があった。「一般的見え方」は遠見視力が低い者だけと関連があり、この設問は『ものの見え方はどうですか?』と全体的な物の見え方を問うており、遠くが見えること=ものがよく見えることと主観的に感じている可能性があった。一方、「見え方による役割機能」は近見視力が低い者だけと関連があり、施設入所者にとって身近な行動・活動が近見視力に関係している可能性があった。
|