平成21年度は、水俣病に関する研究内容、保健師活動との関連を明確にするために、Medlineを中心に国内及び国外での水俣病研究の文献レビューを行なった。公衆衛生看護に関する文献は一番古い文献は、伊藤蓮尾著「熊本県水俣保健所管内における脳性小児マヒ患者の疫学的考察」(1963年看護VOL15-12)であった。発見当初は、何がおこっているかわからなかったため脳性小児マヒとの判別が必要であった。それを補足するための論文として「水俣病の精神症状」(1963年井上孟文)、「水俣病の神経症状」(1963年高木元昭)、「水俣地区に集団発生した先天性・外因性精神薄弱」(1964年原田正純)があり、復刻水俣病論文三部作として出版されている(2009)。 現地に二度赴き、公衆衛生分野に関する当時の資料を収集したり、次年度のインタビュー対象者の発掘を行ったりした。水俣保健所と水俣市保健センターの保健師と面接した結果、-昭和30年当時の活動を知っている保健師が存在していることがわかった。また、保健師以外の看護職が、胎児性水俣病の患者宅を家庭訪問したり、医師の移動診療所活動の一環として「たけのこ塾」という健康学習を行っていたことがわかった。次年度は、保健師および保健師と類似する活動を実施していた医療職を中心にインタビューを行う予定である。水俣学研究センターでの資料収集では、窒素工場に勤務していた労働者の資料発掘や、不知火海漁民の語りを採録した論文「芦北漁民松崎忠男:女島聞き書」(2009.井上ゆかり)があり、当事者を囲む人々の発掘が行われていたことがわかった。次年度はこれらの収集した内容をもとにインタビュー調査を実施する予定である。
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