はじめに:平成23年度は、前年度にインタビューを実施した看護師の堀田氏からの家庭訪問を受けた住民を対象にインタビューを実施し、その時の活動の成果としてなにがあったのかを整理した。堀田氏の家庭訪問を受けたことについて、どのような活動であり、その時対象者自身にどのような変化があったのかを聞き取った。本研究にあたっては、本学の倫理審査の承認を得ている。また、本テーマの歴史的な重要性から、対象者本人の実名を出すことについては本人に説明し、承諾が得られた人のみを実名を出し、承諾書を得ている。 方法:インタビュー対象者は、水俣市に在住し、水俣病と診断を受け堀田氏から紹介された4名である。インタビューは対象者が生活または活動しているところに出向いて行った。インタビュー時間はそれぞれ60分ほどであった。 結果:4名のインタビュー結果を整理した。堀田氏の家庭訪問は、数年間にわたる長期的な関わりであった。訪問頻度は、毎日であったり週に一度定期的であったりした。治療法もなく薬もない中で、医者にはいきたくないと思っていた患者たちは家庭の中で不安がいっぱいで生活しており、堀田氏の訪問で精神的に大変支えになっていた。訪問の内容は、患部のマッサージ、家事育児の手伝い、胎児性水俣病の患者さんを他の同様の患者さんとつなぐ、話を聴くなどが主であった。時には、患者宅で一緒に食事をすることもあり、症状が軽くなる方法を家族とともに暗中模索し心がほぐれるように関わってくれていた。また、対象者が持っている力を引き出そうとしている関わりであった。この訪問を受けて症状が軽くなり他の患者さんたちにも伝えようということになり、しおりを作ったり、みんなで話して、みんなの気持ちをまとめるような運動が広がっていった。これらの活動は、無休のボランティア活動であった。 考察:4名という少ないケースの結果ではあるが、堀田氏の家庭訪問は現在の在宅看護ではなく、相手のセルフケアに着目し、家庭の中で改善を目指す保健師活動に類似する活動であった。また、これらの活動を基にして、人の気持ちをまとめながら次の活動につながっていったという事実から、保健師の地区活動にあたる活動であったことも推測された。当時の公衆衛生看護活動に代わって、市民による活動が行われていたことが明らかとなった。 今後これらの研究活動は保健師のコンピテンシーを明確に示すことと関連付けたいと考えているため、今年度は保健師のコンピテンシーに関する研究の報告を学会でおこなった。
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