本研究の目的は、就労型・地域型活動に参加する若年認知症者間および若年認知症者-スタッフ間でどのような相互作用がおこなわれているかを明らかにすることである。本年度は、1.文献検討、2.参加観察のトレーニング、3.データ収集を行った。1.若年認知症者の就労支援を求める声が広がりつつあるなか、社会参加型(就労型・地域型)活動に参加する若年認知症者間および若年認知症者-スタッフ間の相互作用についての詳細な分析の必要性を再確認した。2.研究フィールドで予備的参加観察を行い、観察の視点やフィールドノーツの記載内容等についてトレーニングを行い、専門的知識の提供を受けた。3.実施計画に沿って、フィールドにおける参加観察とインタビューを開始した。現在の研究参加者は若年認知症者5名(CDR1-2)、スタッフ5名、研究補助参加者(家族)4名である。(1)若年認知症者間について:個別活動を行っていても場の状況を捉えようとしていた。活動を行っていない他の若年認知症者に活動を促す声かけを行うなどの相互支援や、ユーモアを活用し他者との相互作用を発展させていた。(2)若年認知症者-スタッフ間について:スタッフは若年認知症者の活動を支援するために全体の状況と個別の活動に必要最低限の介入を行っていた。若年認知症者の活動分析を行い、各自の保有能力にあわせた作業の設定を行っていた。全体的に、ユーモアの多用と活動成果の認識が相互作用を促進することが観察された。支援方法により若年認知症者は新たなスキルを獲得し保有能力を拡大しており、支援のあり方の重要性が明らかになった。次年度は、参加観察とインタビューによるデータ収集を継続し、相互作用の詳細な分析に取り組む予定である。
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