研究概要 |
わが国では,平成20年度から内臓脂肪蓄積症候群(メタボリックシンドローム以下,MS)の概念を導入した「特定健康診査」および「特定保健指導」が実施されている.我々は,健診データを活用した保健指導法開発の試みとして実施した先行調査において,肥満,高血圧,糖代謝異常,脂質代謝異常等のMSに関する検査値の異常に,歯磨きの頻度が相関している結果を得ていた.平成21年度の調査では,14230名の健診データを用いて,189の問診項目からランダムフォレストによる変数選択を行い,性別・年代を含めた調整すべき背景因子20項目を選択した.さらに,得られたモデルで算出した傾向スコアを用いた層別解析によって,歯磨きの頻度とMS関連検査値の関連について,共変量の影響を除いた結果を統計学的に導いた.そこでは,性別,年齢等の共変量を調整しても,歯磨きを2回以上行うことは,MSのリスクを0.82(95%CL 0.74~0.96)にするという結果を得た.この結果については,現在,論文執筆中である.関連研究によると,歯磨きに代表される口腔ケア行動は,その他の健康行動に関連していることが報告されている.つまり口腔に関する健康行動を実践することで,他の健康行動が変化し,検査値につながっている可能性がある.これら断面研究の結果は直接的な因果関係を示すものではないが,介入調査によってこの関係を明らかにすることは,有効な保健指導の一助となる可能性がある.本調査結果は,次の介入調査計画の基盤となるものである.
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