研究概要 |
我々は,健診データを活用した保健指導法開発の試みとして実施した先行調査において,肥満,高血圧,糖代謝異常,脂質代謝異常等のMSに関する検査値の異常に,歯磨きの頻度が相関している結果を得ていた.平成21年度は基礎解析として,諸因子を調整した解析を行い,MSリスクと歯磨きの頻度の直接的な関連性の可能性を確認した.平成22年度に,A健康保険組合被保険者(女性71.4%,年齢47.8±6.93)の健康診査受診者277名を対象に介入調査を実施した.健診受診の機会を利用し,介入群には歯科衛生士による口腔ケア指導を実施し,これまでの口腔ケアより改善することを実施してもらった.また、非介入群にはこれまで通りのケアを続けてもらった.平成22年7月,11月,3月と質問紙調査を実施し,介入群には口腔ケア用品を配布し,口腔ケア継続を奨励した.平成23年7月には1年後の質問紙調査を実施し,健診結果と合わせて介入前との変化をみた.歯磨き頻度の行動改善は介入群と非介入群で明確な差はなかったが,歯間清掃具の使用は介入群で有意に改善した(p<0.001).歯磨き時間の延長も介入群のほうがより改善した(P=0.06).何らかの改善が行われた者は介入群70.6%であり,非介入群45.5%と比較して有意に多かった(p<0.001).転職等で脱落した者を除く264名分の健診結果ではMSに関する検査データにおいて,介入群と非介入群の変化に明らかな差異はなかった.また,1年後に回収された質問紙調査213名分による生活習慣行動の解析においても明らかな差異がみられる項目はなかった.さらに調整因子を考慮した解析を進めている.
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