研究課題/領域番号 |
21670002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白崎 竜一 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40423149)
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キーワード | 神経回路網形成 / 軸索ガイダンス / 交連ニューロン / 正中交差 / 運命決定 / 転写調節因子 / 電気穿孔法 / フロアプレート |
研究概要 |
本研究課題では、マウスの交連ニューロンの発生分化プログラムに焦点をあて、神経回路網の多様性構築の分子・機構の解明を目指している。前年度までの研究により、交連ニューロンに固有の軸索ガイダンスプログラムの発現を担っている転写調節因子を複数同定することに成功した。そこで本年度は、これらの転写調節因子の下流に存在する軸索ガイダンス関連分子を、マウス胎仔へのin vivo電気穿孔法を利用した遺伝子導入による異所的な遺伝子発現系とDNAマイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を組み合わせることで探索した。また、実際に得られた分子のin vivoでの発現解析を行い、交連ニューロンのサブクラス特異性ならびに発現時期との関連を詳細に調べた。その結果、交連ニューロンのサブクラス特異的に発現し、軸索ガイダンスを直接制御している可能性のある分子が複数見出された。さらにこれらの分子のいくつかは、軸索ガイダンスの分野では新規性の高い分子であった。一方で、交連ニューロンの軸索ガイダンスプログラムの再編成機構の解明を日指す研究においては、本年度は正中交差前後でその発現が変化するガイダンス分子受容体の発現をその上流で制御(抑制)している可能性がある転写調節因子の機能解析を行った。ここではこの抑制性転写調節因子を交連ニューロン軸索の正中交差が起こる前段階から強制発現させることで、その後の交連ニューロン軸索の伸長パターンにどのような影響が生じるのかをin vivoで解析した。その結果、この転写調節因子が軸索ガイダンスプログラムの再編成に関わっていることを支持する実験結果は得られなかった。一方で、交連ニューロン軸索の正中交差前後に発現が変化する分子の探索も進めた。その結果、正中部フロアプレート交差後に発現が増加し、軸索ガイダンスプログラムの再編成過程に関与している可能性が高い細胞内シグナル分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の最終的な目標としては、2つの目的からのアプローチにより、神経回路網の多様性構築の分子機構の解明を目指すことにある。現在までの達成度としては、目的の1つ目においては当初の計画通りに順調に進展している。一方、目的の2つ目では当初の計画より一部に遅れがあるが、それを補う形の新たなアプローチにより新規性の高い成果が得られつつある。したがって、全体としては概ね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は交連ニューロンの発生分化プログラムに焦点をあて、神経回路網の多様性形成の分子基盤の理解を推進させるものである。今後の研究の推進方策としては、目的1「交連ニューロンのサブクラス特異的な軸索ガイダンスプログラムの同定」においては、当初の計画通りに推移していることから、これを受けてさらに進展させる。特に、交連ニューロンのサブクラス特異的に発現する転写調節因子によって発現制御を受けている軸索ガイダンス関連分子の機能解析をin vivoにおいて推し進める。目的2「軸索ガイダンスプログラムの修飾改変を引き起こす分子機構の解明」においては、現在得られている新規性の高い知見に関する研究を優先的に進める。また、ガイダンス分子レセプターの止中交差前後における選択的局在の制御機構の解明も引き続き行う。
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